雇用契約:労働条件通知書、試用期間、社会保険、必須書類
労働条件通知書の14項目必須記載、試用期間3-6か月、社会保険4種、入社時に受け取るべき給与明細、雇用契約書原本、源泉徴収票を実用基準で整理します。
日本の雇用契約は入社時に契約書だけでなく一連の書類を受け取ります。労働基準法は雇用主に「労働条件通知書」の書面交付を義務付けており(労基法第15条)、違反は法令違反です。契約書自体、社会保険加入、源泉徴収、税務関係は入社初日から発生し、これらを把握しておくと在留更新、転職、退社で躓きを減らせます。この記事では労働条件通知書、入社時書類、社会保険、給与明細と源泉徴収、在留資格との関係、落とし穴の順で整理します。
1. 労働条件通知書:14項目の必須記載
労基法は入社時に書面(2019年改正後は電子データも可)での労働条件通知書交付を義務付け、14項目の必須記載があります(うち6項目は絶対必須、残りは状況により)。
| 区分 | 必須項目 |
|---|---|
| 絶対必須(6項目) | 契約期間、就業場所、業務内容、始業終業時刻、賃金(決定・計算・支払方法・締日・支払日)、退職関連事項 |
| 相対必須(8項目) | 退職手当、賞与、最低賃金、食費と作業用品の負担、安全衛生、職業訓練、災害補償、休暇 |
注意点を整理します。試用期間と契約期間は別記載で、3-6か月が標準、最長1年です。試用期間中の解雇基準は緩い(14日未満の予告で可)一方、本採用後は厳格化されます。賃金支払日は毎月最低1回、固定日が義務(労基法第24条)、休日は週1日または4週で4日以上(労基法最低基準)、一般企業は週2日(土日)です。
書面の労働条件通知書を受け取らないこと自体が違反です。「口頭で説明したから」は通用しません。受け取らない場合は入社時に必ず請求します。
出典:厚生労働省:労働基準法第15条 労働条件の明示、厚生労働省:労働条件通知書ひな形。
2. 入社時に受け取る書類リスト
入社時に雇用主から受け取るか自分で保管しておく書類が6種類あります。雇用契約書は契約期間、業務内容、賃金額を記載し、自分が署名押印した原本を保管します(コピーでは不十分、紛失時の再発行は手間です)。労働条件通知書は前述の通り、雇用契約書と一体化する場合もあります(「雇用契約書兼労働条件通知書」)。就業規則は従業員10人以上の企業に作成と労働基準監督署提出が義務付けられ(労基法第89条)、賃金計算、休暇制度、懲戒などを規定、全従業員への共有義務があり、通常は会社サイトかイントラから閲覧できます。健康保険の資格は入社1-2週間で発効し(紙の保険証は2024年12月で新規発行終了、マイナ保険証か資格確認書で3割負担)、基礎年金番号通知書(旧年金手帳も可)は転職時に新会社に引き継ぎ、マイナンバーは会社の源泉徴収と年末調整に使われます。
入社時に会社へ提出する書類は、前職の源泉徴収票、基礎年金番号通知書(旧年金手帳も可)、雇用保険被保険者証、扶養控除等申告書、銀行口座振替依頼書(給与振込口座)、住民票記載事項証明書、健康診断結果(要求時)、印鑑です。
出典:厚生労働省:就業規則を作成しましょう、国税庁:給与所得者の扶養控除等申告書。
3. 社会保険4種:強制加入
正社員と一定条件を満たす非正規(週30時間以上)は社会保険4種に強制加入します。
| 保険 | 内容 | 負担割合 |
|---|---|---|
| 健康保険 | 受診3割負担、出産育児一時金、傷病手当金 | 労使折半(自己負担約5%) |
| 厚生年金 | 老齢・障害・遺族年金 | 労使折半(自己負担約9.15%) |
| 雇用保険 | 失業手当、育児休業給付、職業訓練費 | 自己0.6%、会社0.95% |
| 労災保険 | 労災と通勤災害の医療と休業補償 | 全額会社負担 |
健康保険と厚生年金の合計は給与の約15%を労使折半(自己負担約7.5%)、月給¥300,000なら月約¥22,500の天引きです。
国民健康保険と国民年金(自営業者向け)から会社の社会保険への自動切替時には、入社時に旧住所の国民健保の解約手続きを自分で行う必要があります(保険証返還と解約申請書)。手続きを忘れると二重徴収になります。
出典:厚生労働省:社会保険制度の概要、日本年金機構:厚生年金保険、全国健康保険協会:保険料率。
4. 給与明細と源泉徴収
毎月の給与振込前に「給与明細」(紙か電子)が発行され、最低2年は保管します。
主な項目は3ブロックで、支給(基本給、各種手当=住宅・家族・通勤・職務・残業、賞与=年2回)、控除(健康保険、厚生年金、雇用保険、所得税の源泉徴収、住民税)、手取り(支給合計から控除合計)です。
年末(12月)に「年末調整」があり、所得税の精算が行われます。会社が国税庁に源泉徴収を行った後、過不足を12月の給与で清算します。「源泉徴収票」は12-1月に発行され、確定申告、在留更新、転職に必須で、5年以上保管します。
転職や退職時には会社から「離職票」(失業手当受給用)とその年の「源泉徴収票」を必ず受け取ります。
出典:国税庁:源泉徴収票の作成と保管、厚生労働省:給与明細書の基本ルール。
5. 在留資格との関係(外国人向け)
技人国、高度専門職などの就労ビザ所持者が転職や入社する場合、14日以内に出入国在留管理庁に「契約機関に関する届出」を提出する必要があります(在留管理法第19条の16)。届出はオンラインまたは入管窓口で行えます。
更新時に提出する書類は、労働条件通知書の写し、直近3か月の給与明細、源泉徴収票、納税証明書、社会保険加入証明(健保証の写し)です。契約内容と在留資格の業務範囲が一致することが更新条件の核心です。
転職後に業務内容が変わる場合(例:技人国の業務が技術系から国際業務系に変わる)、新たに「就労資格証明書」を申請して確認するのが安全です(手数料¥1,200、約1-3か月)。後の更新時にトラブルを防げます。
出典:出入国在留管理庁:契約機関に関する届出、出入国在留管理庁:就労資格証明書。
6. よくある落とし穴
書面の労働条件通知書を受け取らずに入社するのは典型的なリスクです。入社前に必ず請求し、口頭説明だけでは将来の紛争時に証拠がありません。
試用期間中に簡単に解雇されるケースもあります。試用期間中は14日未満の予告で解雇可能、本採用後は30日前の予告か30日分平均賃金の予告手当が必要です(労基法第20条)。試用期間の評価は雇用主の裁量が大きいです。
退職時に源泉徴収票や離職票を受け取らずに去るのは大きな失敗です。確定申告、在留更新、失業手当申請のすべてに必須で、紛失時は旧会社に再発行を依頼、最悪3か月待ちます。
社会保険の切替を忘れる失敗もあります。入社翌日から国民健保が会社の社会保険に自動切替される一方、旧住所の国民健保の解約は自分で行う必要があり、忘れると二重徴収になります。
外国人が14日以内に届出を忘れるのも代表的なミスです。「契約機関に関する届出」は次回の更新審査で必ず確認され、1年放置すると審査で不利になります。
転職時に「業務内容は同じ」と自己判断するのも危険です。就労資格証明書を取得しておけば安心で、「業務が違う」と指摘されて更新拒否されるリスクを避けられます。
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