熱中症:暑さ指数の段階、重症度Ⅰ-Ⅲ、現場での冷却と水分
WBGT31以上は運動原則中止。重症度の分かれ目は意識と「自分で水を飲めるか」。首・脇・脚の付け根を冷やす理由、経口補水液とスポーツドリンクのナトリウム差、5-15℃を少量ずつ。
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特集日本の夏の旅行特集猛暑、日焼け対策、熱中症、受診、交通、気温で組み直す街の動線。全 13 本
熱中症は「長く日に当たると気分が悪くなる」ものではなく、体温調節が破綻して臓器が傷み始める連続した過程です。めまいから意識障害までの間に、はっきりした段差はありません。2026年7月13-19日の1週間で救急搬送は全国10,857人、うち65歳以上が過半数を占めました。発生場所で最も多いのは屋外ではなく住居です。旅行中でいえば、宿の部屋で冷房を切って寝る場面がこれに当たります。
暑さ指数の段階が、その日にできることを決める
暑さ指数(WBGT)は湿度と輻射熱を含むため、気温より体への負担をよく表します。日本生気象学会と日本スポーツ協会が示す区分は5段階で、環境省の予防情報サイトが地点ごとの実測値と予測値を出しています。
| 暑さ指数 | 区分 | 日常生活 | 運動 |
|---|---|---|---|
| 31以上 | 危険 | 高齢者は安静時でも危険。外出はなるべく避ける | 原則中止 |
| 28-31 | 厳重警戒 | 外出時は炎天下を避け、室内では室温上昇に注意 | 激しい運動は中止。10-20分ごとに休息 |
| 25-28 | 警戒 | 中等度以上の活動では定期的に十分な休息 | 30分ごとに休息 |
| 21-25 | 注意 | 一般に危険は小さいが激しい運動や重労働で発生 | 積極的に水分補給 |
| 21未満 | ほぼ安全 | 通常は危険が小さい | 適宜水分補給 |
日本の都市部は7-8月の日中の多くが28を超え、正午前後は31を上回ることが珍しくありません。この表から行程を逆算します。31に達する日は連続した屋外歩行を30分以内にとどめ、間に必ず冷房のある屋内を挟みます。28-31なら15分ごとにコンビニか地下街で体を冷やします。経路検索が出す「徒歩25分」は、この湿度では涼しい季節の1時間に近い負担です。
重症度3段階と、判断に使う2点
日本救急医学会は2000年以降、必要な治療の程度から熱中症を3段階に分けています。
Ⅰ度は現場の応急処置で対応できる軽症で、めまい、立ちくらみ、大量の発汗、手足のしびれ、こむら返りが該当します。Ⅱ度は病院への搬送が必要で、頭痛、嘔吐、倦怠感、集中力や判断力の低下が出ます。本人は「気分が悪い」とは言えても、どこがどう悪いかを説明できません。Ⅲ度は入院と集中治療が必要な段階で、意識障害、けいれん、高体温、まっすぐ歩けない、呼びかけへの反応が鈍いといった状態です。
現場では症状表を覚える必要はなく、2点だけ見ます。意識が少しでもおかしければⅡ度以上として扱い、自然に良くなるのを待たないこと。もう一つは自分で水を飲めるかどうかで、飲めない、あるいは飲ませるとむせるなら、その場で119番します。無理に飲ませてはいけません。
出典:環境省:熱中症になったときには、総務省消防庁:熱中症情報
応急処置の順番は決まっている
Ⅱ度以下と判断したら、動作の順番が結果を左右します。
第一に日陰か冷房のある屋内へ移します。夏の日本で最も近い冷却地点はコンビニ、地下街の入口、駅の待合室、百貨店の1階で、いずれもそのまま入れます。第二に衣服をゆるめます。襟元、ベルト、靴まで解いて皮膚から熱を逃がします。第三に冷却です。保冷剤、冷えた飲料の缶、コンビニの氷をタオル越しに、首の両側、脇の下、脚の付け根の前面の3か所に当てます。太い静脈が体表近くを通るため、額に当てるより血液を冷やす効率が高くなります。同時に皮膚を濡らして風を送ると、気化熱で単独の冷却より速く下がります。
第四に水分と塩分ですが、本人の意識がはっきりしていて自力で飲めることが前提です。この間、一人にしてはいけません。Ⅱ度からⅢ度への悪化は十数分で起こります。
119番は全国共通、24時間、無料です。通報時に聞かれるのは場所、症状、年齢、意識の有無の4点です。日本語が出てこなければ英語で伝えても構いません。主要都市の消防本部は三者通話による通訳に対応しています。
何を、どれだけ、何度で飲むか
応急処置の水分だけは別に扱います。間違える人が多いためです。
経口補水液はナトリウムがスポーツドリンクの2倍以上あり、糖分は控えめで、すでに脱水した状態に対応します。市販品は特別用途食品(病者用)の制度に沿って製造され、世界保健機関も同様の組成を推奨しています。代表的な製品は大塚製薬工場のOS-1で、ドラッグストアと一部のコンビニにボトルとゼリーがあります。ポカリスエットやアクエリアスはスポーツドリンクで、歩きながらの補給には足りますが、明らかな脱水にはナトリウム濃度が不足します。
水だけを飲むと血中のナトリウムがさらに薄まり、症状が悪化することがあります。「水はたくさん飲んでいたのに倒れた」の多くはこれです。1日3回の食事から摂れる水分はおよそ1Lで、残る1.2L程度は意識して飲む必要があり、暑い日に歩き回ればさらに増えます。一度に大量に飲むより少量を頻回に、飲料の温度は5-15℃が吸収に適します。コンビニの冷蔵ケースがちょうどこの範囲です。
塩分タブレットと水の組み合わせが最も手軽で、1袋数百円でドラッグストアにもコンビニにもあります。梅干しと味噌汁でも塩分は補えます。
現地で買える冷却グッズ
装備は日本で買えるので、持参する必要はほとんどありません。
ネッククーラーのうちPCM素材のクールリングは電源が不要で、28℃以下で再び固まるため繰り返し使え、結露で服を濡らしません。価格はおおむね¥1,220-1,890です。ペルチェ素子の冷却プレートを備えた電動タイプは冷却力が高い一方、充電が必要で重量もあります。ハンディファンは湿度の高い日本では単独では効果が限られ、ミストか濡れたタオルと併用して気化熱を使う形になります。
冷却シートを額に貼るのは体感が良くなるだけで、深部体温はほとんど下がりません。下げるなら首、脇、脚の付け根に戻ります。日傘は性別を問わず使われますが、コンビニのビニール傘は紫外線を通すのでUVカット表示のあるものを選びます。手ぬぐいを濡らして首にかけるのが最も安上がりです。
マツモトキヨシ、ウエルシア、ドン・キホーテは7-8月に売り場を店頭に出します。日焼け止めの選び方はドラッグストアの日焼け止めにまとめました。
繰り返し起きている失敗
宿の冷房を切って寝るのが一つ目です。消防庁の統計で発生場所の最多が住居であり、夜間と早朝の事例も少なくありません。日本の夏は熱帯夜が明け方まで続くため、26-28℃で一晩つけたままのほうが、タイマーで切るより安全です。
アラートを参考情報として扱うのが二つ目です。熱中症警戒アラートが出ると市町村がクーリングシェルターを開放します。市役所、図書館、公民館が多く、登録も国籍の確認もなく無料で入れます。
アルコールとカフェインが三つ目です。ビールには利尿作用があり、飲んだ量より失う量が多くなります。昼に生ビールを飲んでから屋外を歩くのは分の悪い取引です。
四つ目は同行する高齢者と子どもです。ベビーカーは地面に近く、アスファルトの輻射熱で実際の温度が大人の体感より数度高くなります。信号待ちやホームでは抱き上げるか日陰に移します。
行程全体の組み方は日本の夏の旅行にあります。
用語
- 暑さ指数(WBGT): 湿度と輻射熱を含む暑熱の指標
- 経口補水液: ナトリウム濃度が高く脱水時に用いる飲料
- 熱帯夜: 最低気温が25℃以上の夜
- クーリングシェルター: アラート発表時に開放される冷房施設
- 塩分タブレット: 水と併用して塩分を補う錠剤