短期滞在中に体調を崩したら:自由診療の費用、旅行保険、薬局
在留3か月以下は公的医療保険に入れず自由診療。1点¥30で請求する医療機関、選定療養費¥7,700以上、提携病院でのキャッシュレスと帰国後の償還払いの差、2026年5月から変わった市販薬の販売ルール。
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特集日本の夏の旅行特集猛暑、日焼け対策、熱中症、受診、交通、気温で組み直す街の動線。全 13 本
観光庁が2023年10月から2024年2月に行った調査では、訪日外国人のうち約4%が旅行中に病気やけがをし、その6割が風邪や発熱でした。同じ調査で民間の医療保険に加入していたのは約73%なので、およそ4人に1人は全額自己負担の状態で日本にいることになります。医療の質は問題になりません。詰まるのは費用の構造と言葉の2点で、これは出発前の10分で片がつきます。
クリニックか、病院か、119番か
日本の医療機関は病床数で2つに分かれます。クリニック(19床以下)は風邪、発熱、胃腸炎、軽いけが、皮膚の問題を扱い、待ち時間が短く費用も抑えられます。日中の一般的な症状はまずここです。病院(20床以上)はCT、手術、入院、専門診療を担います。
次の3つはためらわず119番です。意識がない、または反応が鈍い。呼吸が苦しい。大量に出血している、または骨折で変形している。救急車は全国無料で24時間、国籍も保険の有無も問われません。呼ぶべきか迷うときは#7119(救急安心センター事業、東京・大阪・埼玉など主要地域で運用)、子どもの症状なら#8000です。通報時の言い方は救急と119番にまとめました。
夜間と休日は一般のクリニックが閉まるため、行き先は休日夜間急患センターか病院の救急外来になります。どちらも時間外加算が付くので、急がない症状は翌朝のほうが安く済みます。
公的保険がないと、いくらになるのか
どこに行くかで流れが決まり、保険の状態で金額が決まります。在留期間3か月以下の短期滞在者は公的医療保険に加入できないため、診療は自由診療となり、価格は医療機関が定めます。
保険診療は点数制で1点¥10、患者の窓口負担はその3割です。公的保険がない場合、この換算に規制がかかりません。2025年4月1日から、公的保険を持たない外国籍患者に対して1点¥30で請求する医療機関が出ており、信州大学医学部附属病院はこの基準を公開しています。厚生労働省の調査では有効回答5,424施設のうち約8割が保険診療と同額でしたが、137施設(3%)は2倍を超える設定でした。
さらに2つの加算が乗ります。紹介状なしで大病院を初診受診すると選定療養費が医科¥7,700以上(2022年10月改定の全国下限)かかり、夜間・休日・深夜にはそれぞれ時間外加算が付きます。観光庁が集計した訪日外国人の医療費未収金は患者1人あたり平均約¥49,709で、これは外来1回に検査と処方が加わった程度の規模です。入院や手術になれば数十万円からになります。
出典:信州大学医学部附属病院:外国人患者さんの診療単価について、厚生労働省:外国人患者の受入れに係る実態調査
旅行保険は支払い方式で大きく変わる
金額の規模がわかったら、次は保険の使い方です。海外旅行保険の日本での支払いには2つの方式があり、出発前にどちらかを確認しておく必要があります。
キャッシュレス診療は保険会社と提携している医療機関で、保険証明を示せば窓口での支払いが不要になり、病院が保険会社に直接請求します。東京海上日動、三井住友海上、損保ジャパンなどが提携病院の一覧を各社サイトで公開しているので、行き先の都市の数軒を控えておきます。
償還払いは全額を立て替え、帰国後に領収書と診断書で請求する方式です。救急で数十万円をその場でカードに通す必要があり、さらに英語などで書かれた診断書が要ります。診断書は1通おおむね¥10,000前後で、診察料とは別会計です。
クレジットカード付帯の保険は自動付帯か利用付帯かを確認します。利用付帯はそのカードで旅費を支払っていないと有効にならず、あると思っていたのに効かない例が起きます。到着後に加入することもでき、主要空港やJNTO経由で訪日外国人向けの保険が販売されていますが、同じ調査でこれを購入した人は5%にとどまり、存在を知らなかった人の30%が「知っていれば加入したと思う」と答えています。
外国語で受診できる病院と、当日の流れ
現地で当てずっぽうに探すのは避けます。JNTOの医療機関検索は都道府県、対応言語、診療科、JMIP認証、24時間救急、クレジットカード可で絞り込めます。観光庁の統一リストは2026年3月に更新され、年2回(5月と11月)刷新されます。電話ではAMDA国際医療情報センター03-6233-9266(平日10-16時、8言語)が近隣の対応可能な医療機関を教えてくれ、Japan Visitor Hotline050-3816-2787は24時間365日、英中韓に対応します。都市別の一覧は外国語で受診できる病院にあります。
持ち物はパスポート、保険証明、クレジットカードと現金、服用中の薬の写真か説明書です。流れは受付で診療申込書と問診票を書き、呼ばれるのを待ち、診察、必要なら検査、結果、会計、院外の薬局で薬を受け取る順です。処方箋の有効期間は4日で、切れると受診からやり直しになります。全体の流れは日本で病院に行く流れにまとめてあります。
カード払いはどこでもできるわけではありません。小規模なクリニックには現金のみの店も残っており、JNTOの検索にクレジットカードの条件があるのはこのためです。
出典:JNTO:具合が悪くなったとき、観光庁:外国人患者受入れ医療機関リスト
薬局と、2026年5月に変わった販売ルール
軽い症状なら病院に行く必要はなく、ドラッグストアで足ります。ただし今年からルールが変わりました。
市販薬は3つに分かれます。第1類は薬剤師が在席して情報提供を行う必要があり、カウンターの内側に置かれます。第2類と第3類は薬剤師または登録販売者が販売でき、棚から自分で取れます。一般的な風邪薬と解熱鎮痛薬の多くは第2類です。薬剤師も登録販売者も不在の時間帯は該当の棚にカーテンが引かれ、その間は購入できません。
2026年5月1日施行の改正で「指定濫用防止医薬品」が新設されました。対象はエフェドリン、コデイン、プソイドエフェドリン、ジヒドロコデイン、メチルエフェドリン、ブロムワレリル尿素の6成分です。これらを含む風邪薬や鎮咳薬を買うとき、店員は購入者の氏名等を確認し、他店での購入状況を尋ね、複数個や大容量を求める場合は理由を確認します。若年者は原則1箱までです。日本の総合感冒薬には該当成分を含むものが少なくないため、まとめ買いはその場で止まります。
処方薬は薬局で受け取ります。病院の近くにはたいてい1-2軒の調剤薬局があります。
出典:厚生労働省:2026年5月1日施行の医薬品販売制度の改正内容
繰り返し起きている失敗
書類を残さないのが一つ目です。帰国後の請求には領収書、明細書、診断書の3点が要ります。会計窓口は明細書を自動で出さないことがあるので、その場で頼みます。
救急車をタクシー代わりに使うのが二つ目です。搬送自体は無料でも、運ばれた大病院では選定療養費がかかり、軽症での要請に費用を課す自治体も出てきています。
夏に特有の原因が三つ目です。熱中症、日焼け、食中毒、虫刺されの化膿が7-8月に集中し、前の3つは重ければ受診が必要になります。判断の分かれ目は熱中症対策にあります。
常用薬が四つ目です。処方薬は元の包装と英文の説明を添えて持参します。日本には入国時の数量制限があり、向精神薬や一部の鎮痛薬は事前に薬監証明の取得が必要です。
夏の行程全体は日本の夏の旅行にまとめました。
用語
- 自由診療: 公的医療保険が適用されない全額自己負担の診療
- 選定療養費: 紹介状なしで大病院を初診受診する際の特別料金
- キャッシュレス診療: 提携医療機関で窓口負担が生じない支払い方式
- 償還払い: 立て替えて後から保険会社に請求する方式
- 登録販売者: 第2類・第3類医薬品を販売できる資格者